キングダム(1)

キングダム(1)
著者:原泰久
価格:545円(税込、送料込)
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最近、アメトークというバラエティ番組で話題になった『キングダム』という漫画をご存じでしょうか。

この漫画、実は漢の時代に司馬遷という人が書いた『史記』という歴史書をもとに描かれたものなのですが、高校生で習う漢文って有名どころはだいたいこの『史記』からの出典なんですよね。

『刎頚之友(交わりともいう)』『呉越同舟』『臥薪嘗胆』『鴻門之会』『四面楚歌』など有名なエピソードはこの『史記』に描かれていますし、実際にこの漫画でもその登場人物が出てくることもあります。

漫画の舞台は春秋戦国時代で主人公はのちの秦の始皇帝である成とその友人で将軍を目指す信(多分のちの李信)です。

秦の始皇帝といえば中学生でも知っているくらいの有名人ですが、どちらかという暴君のイメージが強いですし、李信には有名なエピソードがありまして、

500年も続いた乱世の春秋戦国時代を終わらせる為に、秦王政は、南の楚の攻略を決め、李信と王翦に対して、楚を攻め取るにはどれだけの兵があれば事足りようかと問い、李信は20万の兵で楚を攻略できると返し、王翦は60万の兵が必要だと返した。王翦が耄碌したと考えた秦王政は、李信に20万の兵を与え、出撃した李信は楚軍と戦って大勝した。しかし、楚の名将で項羽の祖父にあたる項燕の奇襲をうけてしまい、7人の将校を失う大敗を喫した為、王翦が正しいと理解した秦王政は王翦に60万の兵を与え、李信と入れ替わりに前線を任された王翦は、楚を滅亡に追い込んだ。

完全に引き立て役なんですよね。

王翦というのは秦で一番の大将軍で、要するに若い李信は血気盛んで闘いに行って大敗し、経験豊富な王翦はやっぱりすごいという話なのです。

なぜそんな李信を主人公に選んだのかという疑問もありますが、李信はエピソードも少なく謎の多い人物だったので漫画的に解釈が拡げやすいということなのでしょうね。それはともかく非常に面白い漫画ですし、サクセスストーリーとしてもよくできているので中高生に読んでほしいと思います。

こんなことを書くと、受験生に漫画なんか薦めないでくださいと思われるかもしれませんが、

このような歴史漫画を読むことの効果は想像以上に大きいのです。

たとえば、漢文を読んで分からないという高校生に何が分からないのかを尋ねると

「宰相って何」
「なんで王様が何人もいるの」
「国の名前か人の名前か何がなんだか分からない」

難しい単語には大体注釈がついているのですが、それを読んでも分からないという生徒が多いです。

国名や役職名や当時の中国の社会システムに関しての知識がないことが読解の大きな妨げになっているようです。

要するに現代の日本と違いすぎて読んでもピンとこないということなのでしょう。

だからといって本を読みなさいと言っても、歴史に興味のない生徒に小説や歴史の本を読ませるのはハードルが高すぎます。

しかし、漫画だったら読みやすいのではないでしょうか。

絵で表現されているので、ビジュアル的にも理解が進みます。漢文を読んでいてそのシーンを頭でイメージできるというは非常に有利に働くことはいうまでもありません。

もちろん、漫画ですから将軍が女性になっていたり、オリジナルキャラが出ていたり、『史記』にアレンジや独特の解釈を交えているのですが、その辺りのバランスを非常に上手くつくられていてエンターテイメントとしても面白いです。

そういえば、少し前に歴史の専門家の方とお話をしたことがあるのですが、その方は中高生時代に横山光輝の『三国志』を愛読していたそうです。

専門家の方だって漫画からその世界に入っていく人は結構いるということです。

勉強の気分転換に漫画を読むなら、勉強にも役立ちますし、『キングダム』がお勧めですよ。