本年度の公立高校入試が終わりました。
受験生の皆さん、お疲れさまでした。
久しぶりに国語の解説をアップしますので、
特に来年受験を控える中2の皆さんは来年のために一度自分で解いたあと
読んで復習してくださいね。
雑感
全体的な難易度は並で、問題構成も昨年度と変わらず。
比較的解きやすい問題が多かったので国語で得点を稼ぎたい。
大問5は難しいが、得意な人なら50点以上は確実に狙える。
ただし、条件作文は社会的な問題の具体例が思い浮かばず、時間切れになってしまった人が多いかもしれない。
日々の授業や学習の中で様々なテーマで議論するなど準備が必要だ。
大問1 語句・知識問題
問1 漢字
漢字は全て標準レベルなので、全問正解しておきたい。
(1)招く
(2)投票
(3)功績 ※積ではないので注意!
(4)掲げる(かかげる)
(5)陶酔(とうすい)
問2 話し合いの一部からの読み取り
(1)敬語問題
北野さんの「お茶とコーヒーのどちらにいたしますか」という尋ね方について
選ぶのはお客様なので、①の動作主は「お客様」とわかる。したがって、「いたしますか」という「謙譲語」はふさわしくないため、「尊敬語」に変える必要がある。
「いたす」は「する」の謙譲語、
「なさる」が「する」尊敬語となる。
よって、答えは「ウ」
(2)司会の内村さんの発言からどのようなことに留意して話し合いを進めているかについて
内村さんの発言は2つ。
「北野さんは、お客様にどのように尋ねたのですか。」
「では、どのような尋ね方がよいと思いますか。」
どちらも不足した情報について質問しているので、答えは「イ」
問3 街頭募金活動の参加者募集【ちらし】を見て答える問題
(1)熟語の構成について
「募金」は「金を募る」で、
「後の漢字が前の漢字の目的語になっている」ので、
答えは「エ」となる。
(2)持参物が「やる気とスマイル」という表現の効果について
ア…特に問題のない内容
イ…「手帳への記入を促す効果」が×
ウ…「就学率が世界的な問題であること」は全く伝わらないので×
エ…「今回の募金活動を行う意図を読み手に明確に伝える」も無理があるので×
よって答えは「ア」
このようなタイプの問題は消去法でありえないものを消していきましょう。
大問2 小説読解
にしがきようこ「ぼくたちのパラダイス」より
問1 「ユイさん」の人物像の話し合いからの読み取り
(1)山を修復することは〇〇こと
まず【話し合いの1部】を見てみると、
Bさん:山に登っていない時の「ユイさん」は、山を修復することは正しいことだという意見と、山を修復することは□ことだからそのままにしておくべきだという意見の間で「もやもや」しています。
とある。
□に入るのは山を修復することは正しいことだという意見の逆であることは間違いない。あとは「山を修復することは」と書いている部分を本文から探すと「おこがましい」が見つかるはずだ。
(2)山に登ることは〇〇こと
傍線部①より前という手がかりから
ユイさんにとっての山に登る目的を探せば、
指定の字数で「自分のほんとに大切に思っていることに会いにくる」が見つかる。
(3)「ユイさん」の信念について
「ユイさん」の信念を探すと、
2枚目の下段に
・相対する意見があって当たり前
・その中でもがいていくことで、考え自体が強くなっていく
・わかろうとしたり、疑ったりすることが大切
とあるので、ここを指定の字数でまとめる。
「ユイさん」の信念ということだけで探すと、
・素直な気持ちになる
・その思いに正直に動きたい
と迷う人もいたかもしれないが、
あくまでも異なる意見の間で揺れ動くことに対しての信念であることに注意。
また、「~である」につなげるために名詞で終わる必要がある。
したがって、
「相対する意見があって当たり前で、その中でわかろうとしたり、疑ったりすることが大切」
である、が最適。「大切」で終わることに気づけるかどうかがポイント。
問2 心情把握 ノートからの読み取り
(1)ユイさんの〇〇の方向=ユイさんの気持ちの方向
ユイさんは最初は空を見て、星の話をしている。
次に、主人公雄太の方を見て、雄太の話をしている。
つまり、ユイさんの向いたの方向が気持ちの方向となる。
答えは「視線」
最初は「ヘッドライト」だと考えた人が多いかもしれないが、漢字2字で答えなさいという問題なので「視線」が妥当。
(2)「ユイさん」ともう少し一緒に話したい理由を読み取る
物語の中でユイさんは雄太に「一面的な考え」に対する危険性を語っている。
そのことから考えても「イ」が妥当。
大問3 論説文読解
伊藤明夫「40億年、いのちの旅」から
テーマは「ゲノム」
人間とチンパンジーの違いについて
遺伝子や脳の話は頻出。
本文中で語られている鏡の実験は「ミラーテスト」と呼ばれており、
1970年に心理学者のゴードン・ギャラップJrが開発した
人間以外の動物の視覚的な自己認知の有無を確かめる実験。
また、人間の特性としての「言語による蓄積性」も
よく見かける題材なので、ここで覚えておきたい。
問1 資料から推論の流れを読み取る
A
チンパンジーは鏡に映った自分を初めて見た時、
他者に接した時と同じようなAを見せる
とあるので、資料中からその時のことを書いている部分を探す。
すると、「はじめはそこに移った自分を他者だと認識してあいさつ行動などの社会的反応が出てくる」
とあるので、字数から「社会的反応」だとわかる。
B
チンパンジーが鏡を見て、自分の額を触ったことから
鏡に映った自分を認識していることがわかる。
したがって、鏡に映っているチンパンジーを他者だと思っていれば「鏡なしには見えない身体部分を鏡を利用して探索する」ことはない。
問2 「調節領域」の働きについて 説明問題
文末が「働き」になっていることに注意する。
抜き出しなのですぐに見つかる。
問3 なぜ「ヒト」は「特殊な生きもの」と言えるのか。理由説明問題。
ヒトは、個人や集団が得た知識や技術を、〇〇から。
前半の「個人や集団が得た知識や技術」を本文から探すとすぐに見つかる。
「個人や集団が得た知識や技術を~蓄積、種全体で共有することができた」
とあるので、ここを使ってまとめる。
ポイントはヒトとチンパンジーをわけるものが何か。
それは「文字の獲得」であると前々段落にあるので、
それを入れていれば完璧だが難しい。
多くの人が「文字の獲得」を見落として減点されている可能性が高い。
問4 本文の表現や展開について 選択問題
イとエは論外。
アとウで迷った人もいるかもしれないが、
アは最後の「ヒトが存在する意義を明らかにしようとしている」が嘘。
よって、答えは「ウ」となる。
大問4 古文の読解
大分を題材とした古文が2つ出題された。
風土記は地方別にその風土・文化その他について記した奈良時代の地誌。
塵袋は鎌倉時代の辞典。
問1 現代かなづかい
とりあへず→とりあえず
「はひふへほ」は「わいうえお」にする。
ただし、語頭のときはそのまま。
例:「ひめ」は「ひめ」のままで「いめ」とはならない。
問2 傍線部の結末に至った経緯の説明
渡り鳥が〇〇作物が良く育った。
○○に入る言葉を資料の言葉を使って21字以上25字以内で書く。
渡り鳥が何をしたのかを資料から読み取る。
資料には、
稲刈りの終わったころから翌年の春まで、日本には多数の渡り鳥が飛来して大量のフンを田畑に残した。渡り鳥のフンは多くの養分を含むため作物の増収効果は著しく、そのため古代農民は渡り鳥を崇めるようになる。
とある。したがって、
(渡り鳥が)大量のフンを残すことで(作物が良く育った)
という形になることがわかる。あとは字数に余裕があるので、
大量のフンがなぜ効果を出したかの説明を入れる。
「フンは多くの養分を含んでいる」という内容を追加すると、
(渡り鳥が)多くの養分を含む大量のフンを残すことで(作物が良く育った)
まだ19字で足りないため、どこに残すかも追加すると、
(渡り鳥が)多くの養分を含む大量のフンを田畑に残すことで(作物が良く育った)
となって字数を満たす。このように足りない情報を補えば指定の字数に達する。
問3 古文の内容に関連の深い四字熟語を選ぶ
Bの古文は富を得ていた人が餅を的に弓を射ったら、
餅が白い鳥になって逃げてしまい、富を失ったという話
ここで餅=富の象徴という知識があれば簡単だが、
その知識が普通の中学生にあるとは思えないのでそれは知らなくても問題ない。
何となくでも、餅を射たことで富を失ったという流れが分かれば
「因果応報」しかないことはわかるはずだ。
問4 古文の内容の説明
ア…偶然に目撃したことで権力を得たわけではないので×
イ…「白い鳥は純粋な心の象徴」が嘘。
ウ…「豊かさの象徴である白い鳥を捕獲して弓で射た」が嘘。
豊かさの象徴が白い鳥であることも不明だし、
白い鳥を捕獲したとはどこにも書かれていない。
餅を射たら、その餅が白い鳥になって飛び去ったという話。
よって答えは「エ」となる。
大問5 雑誌の記事からの読み取り 条件作文
去年と同じく雑誌記事からの読み取り問題。
アバター技術についてなので、中学生には馴染みがあるのではないか。
知らなくても記事を読めば分かるので問題はない。
問1 イラストの効果について 選択問題
ア…人間とロボットの滑稽な動きを対比しているとあるが、
どちらも滑稽な絵なので対比になっていない上に、
滑稽な動きから高揚感と期待感を伝えるのは無理がある。
イ…アバター技術は、現実世界を体験する技術で、それを前向きに期待する記事なので、
非人間的な側面を風刺しているとは読み取れない。
ウ…全く同じ動きをしているし、わかりやすく端的に表現しているので〇
エ…猫とバケツは関係ない(笑)
したがって答えは「エ」となる。
問2 アバター技術の説明問題
アバター技術について説明している部分を探す。
ポイントは2つある。
・上段の「アバター技術が画期的なのは現実の世界に利用者の「アバター」となるロボットがいて、そのロボットにリアルタイムで自分と同じ動きをさせることができる点」
・下段の「別空間にある現実世界を体感し、そこに主体的にかかわることができる」
この2点を字数内にまとめる。
おそらく下段にしか目がいかなかった人が多いと思うが、それだけだと字数的に足りないはずだ。
そうなったときに他にもないか探すという切り替えが必要になる。
ここまでで時間がなくなった人はもっと早く解くトレーニングが必要だ。
問3 条件作文
「アバター技術」の実用化によって、どのような社会的な問題が解決できるか。
条件作文はまず条件が守れなければ0点だということに注意したい。
今回の条件をまとめておく。
①前半に社会的な問題について具体例を1つ取り上げる。
②後半に前半で取り上げた問題を解決するのに「アバター技術」が効果的である理由を具体的に書く。
③ロボットは人型で自由に動かせることは前提
④文体は常体「だ・である」で書く。81字以上120字以内。
⑤本文を一行目の一マス目から書き始め、行は改めない。
⑥「」は省略して良い。
赤の太文字は今回の作文で難しい、
あるいはひっかかった人が多い条件ではないかと思われるもの。
まず社会的な問題が具体的に思いつかなかった人も多いと思われる。
さらに、いつもと違って
「段落を分けずに1マス目からいきなり書く」
という条件を守ることができただろうか。
ここで点を落とした人が多い可能性が高いので、
上野丘を目指す人はここで稼いでおきたい。
社会的な問題については、逆にアバター技術で解決できそうなものを考えると良い。
例えば、自由に動かせる人型ロボットで何ができるだろうかを考えると、
遠隔操作で細かい作業をすることができるので力の弱い女性や高齢者でも作業ができる。
とするならば介護の現場などに応用できるはずだ。
模範解答例
高齢化社会の中で老々介護が問題になっている。老いた妻が老いた夫の介護をすることもあれば、その逆もある。身体を持ち上げたり支えたりするには力が必要だ。アバター技術なら、力のない人でもロボットによって介護ができ、効果的である。(111字)
社会的な問題の具体例が思いつかなかった場合はどうしようもない。
普段からいかに社会に関心を持ち、様々なテーマで家族や友達と議論するのが理想的だが、なかなかできることではないので、そのような力をどのように身につけるかが今後の課題といえる。